篠山紀信 石川ひとみを撮る

 歌手石川ひとみの信条だった「素直で自然に」という意識に、それでは芸能界でやっていけないよと揺さぶりをかけたのがタモリでしたが、脱ぐことへの抵抗を取り除いたのは篠山紀信ではないかと思う。

 前にも書いたように、篠山紀信はモデルをノセることが非常にうまい写真家です。
「脱ぐって楽しいことなのね。」...これは、石川ひとみの発見の言葉だと、素直に解釈したい。


 
 篠山紀信
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 脱ぐって楽しいことなのね
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 篠山紀信は1回の撮影で、フィルムを大量に使うことで有名です。
 それは、モデルさんが最初のうちは抵抗感や恥ずかしさなどいろいろな思いがあって、どうしても表情が硬くなっているからだとか。

 篠山は簡単な打ち合わせだけで、最初は注文をつけず、200枚300枚と、次々と撮り続ける。
 モデルは、最初のうちは頭に浮かぶ決めポーズとかいろいろやりますが、篠山はひとつひとつ褒め言葉をシャワーのように浴びせ続ける。

 5、600枚も撮ると、さすがにモデルさんもレンズに対する感覚が鈍くなるし、頭の中は真っ白になる。いいかげん疲れてきて躰の無駄な力みもなくなるし、恥ずかしさも霧散していきます。

 そして思い浮かぶポーズも出尽くして、まだやるの?もうどうにでもして!という感じになった時に、ちょっとこうしてみてなどといわれると、「なるほど」などと思ってそうすると、さらに褒められる。
 少し大胆なポーズなど、世界の篠山がさらに喜んだりして、モデルの気分もハイになってくる。


 終わればモデルさんもどっと疲れてへたり込みそうになるほどですが、身体を張って大仕事をしたという充実感、世界の篠山に褒められまくって納得のいく撮影が出来たという喜びがあふれてくるわけです。

  そこからが篠山にとっての本番ですから。もう終わりという頃にモデルが見せる素の表情、それが彼の求めるものですね。ですから、クライアントの要望通りの 写真は、じつは篠山にとっては本番前のリハーサル写真。自分の作品集として残すのは、その後の自然体のモデルさんの写真ですね。

 カレンダーでしたら、1000枚から2000枚は撮っているのではないでしょうか。写真集なら3000枚は撮るとか何かで読んだ記憶があります。

 正確な数字は保証できません。私はモノを記憶するということには頭を使いませんので、それは、パソコンにまかせています。
 物事の本質的なことを押さえておくだけですね。このブログも、過去の事実の後追いをするというスタンスでは、書いておりません。

 そして、石川ひとみちゃんですが、前々回の記事でおわかりのように自分の殻を破らねば道は開けない、という意欲を持っています。それと同時に、年齢的な衰えを感じ始める時期でもあり、記念碑的なものを世界の篠山で残しておきたい、と。


 少なくとも、歌手石川ひとみのプロ意識では、女優のようなできない(向いてない)仕事は出来ないと言うが、曲のプロモーションとして出来ることはやるというケジメはついていたはずです。デビューから8年、25歳の大人ですからね。

 この撮影は1985年(昭和60)のことです。
 前年には「心変わり 瞳の中の女たち」を出していますが、やはり抵抗感はあったかと思います。


 歌手石川ひとみのプロ意識が脱ぐことをも辞さずと思い、カメラマンは山口百恵や松田聖子を激写した世界の篠山となれば、案外乗り気だったのかなと思います。

 それでやってみたら、篠山の手腕によって、楽しい・充実した・満足の出来る仕事が出来た。
 そして、自分が思っていた以上に美しく撮ってもらえた。だから、

 「脱ぐって楽しいことなのね」

 ということになったのではないかな...
 石川ひとみのこころを彩った人が、ここに一人。

 石川ひとみは脱いでしまったけれど、倉田まり子は脱がなかった...
 そういう論議は、小児病的だと思う。
 
 私的には、畑中葉子はドストエフスキー「罪と罰」のソーニャのような自己犠牲の心を持った潔い女だと思えるけどね。

 人それぞれ、背負っていたものの重さが違うということだろうね。
 あるいは、守ろうとしているものが人それぞれ違うということでしょう。

 そういったものを察する惻隠の情を持たない人間が、ぬくぬくした生活を送りながら無責任なことを言ったところで、誰のこころにも響くことはないでしょう。

 歌手石川ひとみが脱いだ経験を通して、こころを硬くしているメンタルブロックのひとつが外れ、より内面性が豊かでしなやかになった、ということがあるはずだと思う。

 脱がない人には分からない感受性の経験を得たということは確かですね。

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