「あなたの天使」と「聖母たちのララバイ」

   またまたVSシリーズ、女性から見た「対幻想」と男性から見た「対幻想」...
 「あなたの天使」はもちろん女性から見た愛の世界。
 この曲が好きだというリクエストがありますので、ご紹介しましょう。

 「男と女の間には 深くて暗い河がある 誰も渡れぬ河なれど エンヤコーラ今夜も舟を出す」
 ご存じ 長谷川きよし『黒の舟唄』 (能吉利人作詞/桜井順作曲

 この問題ね、永遠の課題だなぁー。
 「誰も渡れぬ河」なんですよ、向こうは彼岸で、こちらは此岸。
 それを、それをアメンボとかミズスマシのようにスイスイスイと、語れるものではない。

 それでもやっぱり逢いたくて エンヤコラ今夜も 舟を出すぅー、と。

石川ひとみ「あなたの天使」(1982.06.21)
作詞:友井久美子/作曲:西島三重子/編曲:若草恵

歌詞は割愛させて頂きます。

友井久美子さん、ヤマハのポプコン第14回(1977)で入賞したシンガーソングライターの方です。
応募曲数 約15,000曲ですから、相当な実力派であることは間違いないですね。

ちなみに、この回のグランプリは、あの世良公則、「あんたのバラード」でした。大ヒットしました。

キャリアから見ると、西島三重子さんとほぼ重なっているようで、石川ひとみより2.3歳お姉さんでしょうか。

小洒落た歌詞を書きますね。

印象はプリミティブな日本ロマン派の匂いがあるかな。
本来何の意味もない自然界に自分の感情を投影して、
「9月の雨は寂しくて」みたいなことを言うのが日本浪曼派的という意味ですけど、友井さんは意味喩として使っています。

「海辺の」...青い海という色彩イメージから
「横顔がブルー」...沈んだ表情、という意味転換

「黄昏の海」→沈みゆく夕日を暗示して、
残照の微温感を意味的に「微笑み」に結びつける

意味喩によるイメージ転換の部分で日本浪漫派なものを感じますが、歌詞としては優れた表現だといえるだろう。

まあ、そんなことはさておいて、この歌詞の要は、

「わたしはいつも あなたの天使 側にいてあげる」
...という部分ですね。

そして、男であるわたしに言う、
「沈んだ顔など あなたには 似合わないのよ」

たいへん微妙な歌詞ですね。


 歌詞は字数に限りがあり、書いてあることよりも、書かずにおいてある部分の方が遙かに多い
 ですから、その部分も可能な限り掬い取って批評しなければいけないだろうと思う。

 表現者というのは日常的なコミュニケーションでは決して満たされない内面生活をしているひとなので、他愛のない賛歌は「分かってたまるか、という気持ち」に届くことは、まず、ないですから。


 さてと、比較のために同じテーマを歌っている「聖母たちのララバイ」と比較して、少しだけ考えてみたい。


 岩崎宏美【聖母たちのララバイ】 作詞:山川啓介



 こちらは天使ではなく、聖母です。
 天使も聖母も同列的に見なされがちですけれど、実は天と地とほどの径庭があるはずです。

 こちらの作詞は山川啓介。
 いろいろ書いていますが青い三角定規の「太陽がくれた季節」がTVドラマ主題歌で印象深いです。

 「聖母たちのララバイ」の歌詞は完全に男目線です。

          あの日から決めたの
          その夢を支えて生きていこうと

          ある日、あなたが背中を向けても
          いつも私は あなたを遠くで見つめている
          聖母(マドンナ)


 かたや円熟期に入った岩崎宏美と、宏美の歌が好きだった後輩の石川ひとみ。
 甲乙つけがたいお二人が、同じテーマで、正反対の視点から書かれた歌詞の歌を歌っています。

 歌手が違いますので判断に主観の相違が入ってしまって、まずいのですけれど、どちらの歌を好むかで、その人の精神的成熟度あるいは自立の度合いが測れるのではないかな。
 (持ち歌の多い岩崎宏美、2000枚の原稿を書いても足りないかと、私は思いますけど)

 私の歌詞解釈は岡目八目ですから、鑑賞者(石川ひとみファン)、作詞・作曲者、歌手石川ひとみについて、複眼思考で迫ります。話を簡単にするために、図解で単純化してみました。

fubo_genri.gif
 簡単に言ってしまえば、「あなたの天使」は「ひとりじめ」の女の子よりも、少し自立している大人の女です。自分のことだけでなく、パートナーを思いやる心の余裕と優しさを持っていて、このような恋人だったらいいな、と思えますね。

 問題は受け手の男性ファンです。高校生から大学生くらいの男の子は、急速に自我意識が拡大しはじめ、家庭という母性原理環境を次第にうっとうしく感じてそこから脱出しようという「独立願望」が芽生えてきます。

 そのステージがどの辺にあるのかによって、
 「わたしはいつも あなたの天使 側にいてあげる 沈んだ顔など あなたには 似合わないのよ

...という歌詞に対する、反応が違ってくるのではないかな?

 「ああ、お姉様!といって、その胸に顔を埋めたくなる」のは、「おっぱいバレー」レベルだな。うん。
 ヒゲが濃くなり始め「ちょっとウザイな、ほっといてくれ...」と感じるのは、自立したがっている段階。

 図のように、父性原理の領域は枠で囲っています。
 父性原理とは共同規範性原理ですから、その世界に入るには壁を越えなくてはなりません。

 一方、女性原理は家庭環境の基本ですから、女の子は時には子どもであり、お姉さんだったり、母親だったりと、壁がないのです。

 ですから、女性の自立と男性の自立は、決して同じ過程を経るわけではありません。

 男の場合、「三枚の写真」で述べたように、(男性原理である)社会で自分の居場所を確立するためには、「1日24時間戦い続けて頭の中が真っ白になる日々」を通過していくという時期があるものです。
 韓非子ではありませんけど、『男子一日に百戦す』という時期なのです。自分の心に鎧甲(ヨロイ・カブト)を着せて、仕事という戦場に出陣する、そういう風に毎日を過ごす日々がある。

 そういう男にとっては、「あなたの天使」は口出し無用。
 「沈んだ顔など あなたには 似合わないのよ」...などと、言ってくれるな、ということになるでしょう。

 スーパーサイア人になっているのに、気が抜けて、チチに叱られる悟空になり下がってしまいます。
 
 そういう男にとっては、

 「 ある日、あなたが背中を向けても いつも私は あなたを遠くで見つめている 聖母(マドンナ)

 という歌に、グッと来てしまうはず。
 ただし、このような風に自立している女性というのは男の願望・理想であって、現実には「女を捨てたオトコ女」という感じで「遠くで冷ややかに 見つめているゥー」というふうになりがちだけどね。
 本当は、そういうものを通過しているのでなければ聖母たりえない、だろう。

 なので、「あなたの天使」になってくれる女性を大事にして、「悪いけれどもこういう状況なので、しばらく一人にさせてくれないか」と過不足なく伝えて、『聖母たちのララバイ』でも、聴かせてあげるんだね。
 いきなり「ウザイ!」なんて、言ってはダメだよね。

 それで、決め台詞は...「俺の涙は俺がふく」(美樹克彦)、って、笑い飛ばされるかもなァ。

 石川ひとみの歌ですが、やはり「ジュテーム」版の方が癒しの雰囲気が濃厚ですので、差し替えました。

 今の時代は、癒しを求める人が多いようですから。私たち団塊世代の企業戦士の時代が次第に反省されていく、その風潮を見事にとらえたのが「聖母たちのララバイ」でした。

 一方、「あなたの天使」は明確にお姉様キャラですね。これはナベプロのプロモーションでしょう。

 石川ひとみは「三枚の写真」不振以降、年齢的にも清純派からお姉様キャラにシフトしたのではないかと思う。
 「キャンパスライブ」のトークには、そのような要素が含まれていたのかなと、ふと思います。

 ひとみちゃんは私よりも一回り近く年下ということで、オジサン的にはお姉様キャラは少し馴染まないところがあるので、聖母の方によろめいてしまうけれど、大多数のひとみファンはずっと年下ですから、ひとみお姉様でいいかもしれんなぁ。

 作詞:友井久美子/作曲:西島三重子/編曲:若草恵/歌:石川ひとみ...という女路線ですから、真綿のようにあなたを包み、しかしやがて知らないうちに窒息するほど包み込まれても知らんぞ、オレは...と、後ずさりしてしまうのだ。
 女の触手に絡め取られそうになるとサッと身をかわして逃げてしまうオトコですから、この手の歌を正しく評価はできないな。迫られすぎ、という感じがして...。

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