石川ひとみ 「中野サンプラザ・ライブ」(1982.3.24)から、『守ってあげたい』 をご紹介します。
この曲はシングル盤で、LP 『ジュテーム』の付録(サービス・シングルレコード)としてリリースされました。
石川ひとみが歌う「守ってあげたい」。
その声質、端正な歌唱は松任谷由実とは別の
「一曲の歌」として成立しているといってよい。
【守ってあげたい】 (3'54")作詞・作曲:松任谷由実/編曲:渡辺茂樹
歌詞の引用が出来ませんので、割愛させていただきます。
子どもをもった母親の気持ちという普遍的なテーマですから、シンプルで素直な歌詞でいいのです。
母親でなくとも、父親でも同じ気持ちになります。私自身、生後4、5日の娘を抱いた時、本当に瞳の中に☆が映り込んでいるように思えました。
「
いいかげんだった私のこと」というところは、松任谷由実の心の影が投影されているようですが、
「
守ってあげたい 他には何一つ できなくてもいい」
...というフレーズが、すべてを払拭していますね。
ここには、人としての永遠があります。
ですから、このような歌は、歌詞や曲を超えた背後にあるものが後光のように射していて、あらゆる解釈をホワイトアウトしてしまうでしょう。
人それぞれの「守ってあげたい」があっていいのですね。
【追記】5/7
...と書いて、性分なのでやはりひと言、ふた言書いておきたくなった。
ひとみちゃんファンはやはり、この声の質が好きなのだろうなと思います。
地声のまま、高音域を歌いきっているのが素晴らしいです。
松任谷由実さんの方は、年齢がずっと上の時のコンサートのもので、ひっちゃんのような若々しくはありませんが、円熟味を感じます。
わたし的には、彼女のベタッとした声はあまり好みではありませんが、
※ so you don't have to worry, worry
守ってあげたい のところですね、作詞者ですから、意味を分かっていて歌っているなと思います。
赤ん坊を抱いて、あやすように、話しかけるように、声を落として歌っているわけです。
高音を出すのがきついからファルセットで逃げたというわけではなく、自分の腕の中の(眠っているかもしれない)子に静かに、子守歌のように歌い聴かせるというイメージを持って、歌っているはずです。
シンガーソングライターの強みですね。それは「
初めて言葉をかわした日の」の歌い方に、端的に表れているのではないかと思う。
この歌をきちんと聴いたのは今回が初めてなのですが、「かわした」のところをやけに力を入れて歌っているなというのが第一印象でした。
赤ん坊はそれまで、ただ泣き声をあげるか、笑い声をたてるかだけだったのでしょう。
それが、母親の話しかける声を聞いているうちにある日突然、話しかけに反応して「ババッ」とか「ママッ」とか返事をするようになる。
これは、母親にとって、人生最大の喜びの瞬間でしょう。その気持ちが前提にあって、「守ってあげたい」という歌詞が成立しているわけです。松任谷由実の歌い方、すごく納得できます。
石川ひとみは21歳ですし、アイドルファン騒然としたコンサート会場ですから、つい力が入りすぎたのかもしれません。声を落としたのでは、聞こえない状態だったのかも。
蛇足ながら、英語の発音は強弱のメリハリが大切です。
たとえば、What is the matter with you?は Wha mar(a) you? を強く発音すれば、後の部分は聞こえなくても、さらには発音しなくて良い。
(Be)cause
I love you. をメリハリきかせて欲しかったけど。歌詞を見ないと、
cause I が
功罪に聞こえてしまうな。cause はもっと軽い方が良かったかな。
【追記】
ノイズリダクション版をアップして(注記、削除しました)聴いていたら、さらにひと言ふた言書きたくなった。しつこいですね。
やはり、作詞者の強みですけれど、「
so you don't have to」の発音ですけど、
...松任谷由実の発音は意味的に良いです。発音記号を載せられませんが、アとエの中間の、アクセントのある母音を出しています。
「あなたは何も思い煩うことなんてないのよ!私がいつも見守っているからね」という強い思いが表現されていると思う。
ひっちゃんは軽いアの発音ですけど、それだと母親の強い思いが伝わらないでしょうね。
子どもを持つ親というのは、例え自分が死んだ後でも守護霊にでもなって、我が子を守り続けたいと本気で思うものです。
もちろん生きている時は言わずもがな、ですね。
私は父親ですから母親のようにベタッと子どもとくっつくことはありませんが、「子を持った時父親は神のごとくあらねばならないな」という厳粛な気持ちになりました。
子たちが何か夢にうなされたりするのを聞くと、隣の部屋から「大丈夫だぞ。お父さんがここにいるぞ!」と必ず声をかけたものです。
特に、娘は怖がりでよく怖い夢をみてうなされたりするので、ずいぶん声をかけたものです。
その声で目が覚めた娘は、「目が覚めた、ありがとう!」と、いつも良いタイミングで声をかけてくれると言っていました。子どもが見る怖い夢の世界にまで、親というものは気を配り続けているものです。
ですから、松任谷由実の「
so you don't have to worry」という歌い方、分かってるなと思う。
「私がついているわ!」という気持ちが、しっかりと歌い込まれている、と。
これは、年の功というヤツでしょう。
若い石川ひとみがそのように歌ってしまったら、カバー曲を歌われた歌手のみなさん「この子は、私を引退に追いやった!」と、石川遼クンに負けたアメリカ人ゴルファーみたいなジョークを言わないといけなくなるだろうね。
続【追記】
それで、歌手石川ひとみは実に端正な歌い方をするな、と改めて感じますね。
日本語の部分は、すごくメリハリが利いています。
特に
「
遠い夏 息を殺し とんぼをとった」 「
日暮れまで 土手にすわり れんげを編んだ」の部分、
ああ、いいコード進行だな、メロディーが表情豊かだなと感動しますけど、松任谷由実の歌は音程を外していないのに平板な印象を受けます。声の質のせいなのかもしれませんが、石川ひとみが歌うと何か劇的な展開を見ているようにジーンときます。
似たような小節がたたみ掛けるように続いて、トンボ/レンゲという言葉にドンと落としこまれる。落差のある渓流の流れのように、段階的に流速を高めて、やがて落ち水のごとく、心的な勢いを言葉に吹き込むメロディー展開、いいですね。
スピーカーの音量を絞って聴いていると伝わりにくいかと思います。イヤフォンかヘッドフォン、絶対必要だよ。細かいニュアンスがビンビン伝わってきて、ひとみちゃんの声がいつまでも頭の中で、こだましてしまうでしょう。
私は最近、ずっとこの部分のメロディーが頭にこびりついています。
ビブラートもしっかり決めてきているのですが、抑制が効いていて演歌的ではない。
けれど、教科書のようにそつがないところが、聴くものを強く誘引しない欠点ということになるかな...
なぬ?それはこの可愛さで補って余りある、ってか。

...!...だよねェ...。
ひっちゃんの声は何度も言うようですが、低音部を歌う時は深みを感じます。そして、高音を歌う時に、何とも言えない幼さを感じて少女っぽくなり、それがまたイイんだなァ。
「
so you don't have to worry, worry」 こういうところで、ひっちゃんの声に魅せられますね。
私がくどくど書いていることなんか、一気に吹き飛ばすような高音の張りです。
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