『にわか雨』 岡田冨美子さんが描く男性像

 岡田冨美子の歌詞が「本当はこわいグリム童話」的な話になってしまいましたが、意味喩の説明でした。
 岡田さんは「民放TVの現場スタッフをやっているうちに何となく作詞家になった」そうで、良くも悪くも民放の制作現場の感覚が身についてしまっているのかもしれません。

 岡田さんの場合、実体験よりもTV的虚構世界の臨場体験が多く、その延長上に彼女の歌詞が成立しているのかもしれません。「タイトロープ」などは、TVドラマの入り方そのものと言ってもよいでしょう。 

 ところが女性の心情を描こうとすると、意外にも少女的内面性が浮き出てくるという感じです。

石川ひとみ 『にわか雨』 (1983.06.21)
作詞:岡田冨美子、作曲:西島三重子、編曲:松任谷正隆




niwaka_ame.gif「嫌われているよな 感じがしていたの」
...こういうことは、子どもの頃の女の子には時々あります。男の子が好きな女の子にちょっかいを出したい、からかってみたりして印象づけたいとか。

でも、ある程度の年頃になれば、自分を好きだからそういうちょっかいを出すのだな、と分かってきます。

まして、高校生から大学生くらいの年齢になれば、好かれているのか嫌われているのかの違いは、光と影ほどの鮮烈さを持って分かってくるものです。

まだ色気づいていない中学生の頃が一番微妙な時期で、好きな子が近づくと逃げたりする女の子がいますね。

ですから、17、8歳から20歳くらいの女の子なら、冗談でも何でも自分にちょっかいを出してくる男の子の目を見れば、好かれているのか嫌われているのか、一瞬で分かります。それこそが、女の直感「ピピッと第六感」ではないですか。

そういうことを考えると、この入りの部分はローティーンの女子の気持ち、という感じです。

でも、その割にはものすごく異性を意識している。
少女コミックの世界のような、類型的な少女です。

それで「肩が触れるたびに ごめんね」と謝るほどのウブな彼が、しっかりと映画に誘っただけでなくワインで食事をする...少女コミック的空想世界

このリアリティーの希薄さこそ、岡田さんの少女的内面世界の表れなのだと見れば、歌手石川ひとみと通底するものがありますね。


 岡田さんが小室みつ子さんと違うところは、小室的コミュニケーション・ストロークもあまりやっていないのではないか、と感じるものがある点です。
 岡田さんはある意味で男の子のような「観念的な片思い」派なのではないか、という気がします。

 けれどもやはり女性ですから、男視点ではない。

 男の子は思いきって私をデートに誘い、一緒に映画を見、ワインでお食事をした。それくらい好意を持っている男が、その女の子と「半分ずつ濡れて 近道を避けながら 駅まで歩いた」りするのだろうか?

 普通の男なら、自分は濡れても愛しい彼女は濡れないように、目いっぱい傘を彼女に差し掛けるはずだと思うけど。
 それが男の感覚でしょう?

 女の子の薄いブラウスが半分濡れて「ブラ透け」の恥ずかしい状態になっている(かもしれない)のに、平気で放っておくなんて男なら、恋人も家庭も守れない男だね。
 食事代も、映画のチケット料金もワリカンだったのじゃないか?
 そういうケチな男なら、さっさとフッておしまい!(突然美川憲一調で失礼!)

 どうも、この部分は「何でも一緒、何でも半分ごっこ」という、少女コミック的幸福感が図らずも露呈しているのではないかと...
 そっちに気をとられていて、ふわふわ雲の上を歩いているような気分で、まわりが見えていない。

 少女的世界ではそれでいいのでしょうけど、石川ひとみ24歳の歌としては、かなり苦しいかな。

 でも考えてみると、石川ひとみよりずっと年上の岡田さんがこのような歌詞を書けるということは、筋金入りどころか「超合金少女帯」(貞操帯から連想した意味のない言葉です)を身につけた女性なのかもしれないですね。

 過激なメタファーも、少女コミック的幻想世界の表現だと考えれば、どうってことない歌詞だ、とか。

 この歌詞の中でもっとも印象的フレーズだと思う「半分ずつ濡れて」とか、『夢回帰線』の「女心のぞけば裏窓がある」とか、ハイライト部分に岡田冨美子的不条理が隠れている、というのが不思議な魅力かもしれないです。

 それをサラリと歌いこなしてしまう石川ひとみも、やはりどこか不思議なキャラを帯びているような気がします。アイドルとしての偶像になり得る、偶像性を感じるところが、他のアイドルと違うところでしょう。

 この曲の入りですが、突然の土砂降りという感じで、すこし強すぎる感じが全体のイメージとすこし合わないような気がするけどねなァ。

 こんなに強い土砂降りならば、即どこかに雨宿りだろうね。
 でも、サッと降ってサーッと雨が上がっては、相合い傘はおしまいねって、気がしてあえて土砂降りの中を歩くって?

 まあ、ほどほどの雨を降らして欲しいと、松任谷正隆には言いたいけどねェー...

コメントする

関連ページ&リンク

         「ていすとオブFavorite」

         「お知らせ」(記事 1)

最近のブログ記事

Ishikawa Hitomi "Nagori Yuki" Part2
 石川ひとみ『なごり雪』 from [ …
石川ひとみ 「長そでのカーディガン」
 石川ひとみさんの再起第一作のCDアルバ…
陣営とは何か?大衆音楽のダイナミズム
  わたしがこのブログを始めた…

カテゴリ別タイトル一覧

アイテム

  • aokei.gif
  • kumokei.gif
  • nagasodeno_cardigan.gif
  • ie.gif
  • kayoukyoku01.gif
  • culture_dynamism01.gif
  • shop_around.gif
  • hitominoasa.gif
  • mercy_stew.gif
  • tadaima2.gif
  • kanshou.gif
  • roman_ha.gif
  • koten_jidai.gif
  • youtube.gif
  • hitomi.jpg
  • si50286.gif
  • feed.gif
  • atom_ff.gif
  • atom_ie.gif