石川ひとみ 勝負歌を歌わなかった理由(わけ)

 石川ひとみは「好きだなんて、自分の方からはぜったいに言えないタイプ」。
 そのことが、歌詞にも反映されているということは前回見てきたとおりです。
 『哀愁に走って』などは、一応勝負歌の部類かと思いますが、シングルでは出していません。
 作詞者は歌詞を書く場合、歌手と話し合って、エピソードを聞いたり、本人の考え方を把握するのが普通です。

 そのような話の時に、石川ひとみは「自分から積極的に告白するタイプではなく、相手が言ってくれるまでずっと待っている方ね」ということを説明しているだろうなと思います。

 それは別に問題ではありませんね。

 ここが、作詞家のウデの見せどころではないでしょうか。

 三点セットを揃えなくとも、岩崎宏美 『デュエット』 のように、「好き」を繰り返してもいい。

 勝負歌には、実は、どのように勝負するかが織り込まれているものです。
 「押してもダメなら、引いてみな」というのが勝負の鉄則ですね。

 押し技系...伊藤咲子 『冬の星』→ 「一生一度の恋にしたいの」
        曲のアレンジも、「サッコ、巌流島の決闘に行く」という感じで、勝負歌としていいです。

 引き技系...南 沙織  『青春に恥じないように』 →「その日から涙が止まらなくてもいい」
        ***になってもいいというのが、勝負の内容を表していると思います。

        テレサテン 『時の流れに身をまかせ』 「一度の人生それさえ 捨てることもかまわない」
        柔らかに歌っていますが、人生をかけられては、男としても年貢の納め時と思うでしょう。

 清純派を堅持した南沙織ですから、「その日から涙が止まらなくてもいい」 という歌詞は大きなインプレッションを与えるわけです。
 さりげないけども、大勝負をしているなと思う。

 この辺のことが分かって、上手くアレンジするだけのプロデューサーあるいはディレクターが、石川ひとみ陣営にはいなかったということではないでしょうか。


 前出の松下治夫は「(タレントという)ダイヤモンドの原石を見つけるための眼力と情報力」として、

 「個人的には、優等生タイプはあまり歓迎しない。(中略)やはり、人間的な魅力に欠ける。一般社会では素晴らしいことだけれど、タレントには向かない。
 社長も「そういうのは芸能界をやめさせて家へ帰せ」と言っていた。帰らないと言い張る子はいっぱいいたけど、僕は心を鬼にしてむりやり帰した。
 (中略)
 芸能活動をいくら長くやったところで、一流タレントになれっこないと分かる子は確かにいる。困ったことに、そう言う子に限って真面目だ。」

 松下は自分がスカウトしてきた高橋真梨子を九州に帰します。彼女は根性がありましたので、ライブハウスで実戦経験を重ねて、ペドロ&カプリシャスのボーカリストとして復帰した。

 ナベプロと高橋真梨子の相性が合わなかった、と松下は書いています。

 石川ひとみちゃんの場合は、デビューまでのプロフィールを見れば分かるように優等生のよい子ですので、ナベプロとしても何か個性を付け加えたい、というものがあったはずですね。
 石川ひとみがナベプロに入ったときには、松下は独立をしており、代わって阿木武史が制作部長になった頃だと思います。


 ナベプロは歌だけでなく、バラエティーに対応できるエンターテインメント力を要求していましたので、自前のドリフの番組などで、歌手にいろいろやらせていましたね。


 これは、歌で勝負したい石川ひとみには路線が合わなかったはずです。

 高橋真梨子は歌一筋。岩崎宏美もしかり。松田聖子も生涯アイドル路線。

 こうしてみてくると、歌手石川ひとみはナベプロとは相性が悪かったのだと思います。


 それにしても、ひとみちゃんは恋愛に対しては慎重でのめり込むタイプではなかったようですね。
 ですから勝負歌も、歌っても入りきらないかもしれない。やはり、南沙織路線が良かったと思う。

 入りきる人というのは、だいたいが恋愛事件を起こしています。
 とくに女性歌手は恋の歌を歌いまくっているわけですので、ロマンチックモードになっていて、恋愛問題を必ずと言っていいほど起こすようです。

 いくら(付き合うのを)やめろといっても、やめる歌手はいなかったと松下は述懐しています。

 伊藤咲子は恋愛宣言をしたし、木之内みどりは逃避行、松田聖子と山口百恵は番組内で泣いた。

 岩崎宏美は「ロマンチック・コンサート」で泣きましたが、これはコンサートの名曲の数々に、心が揺ぶらたのでしょう。石川ひとみ以上に男っぽい性格ですから、恋愛体質ではないタイプだね。
 
 石川ひとみが紅白で泣いたのは、苦節4年の感慨があったからですね。

 木之内みどり失踪事件の後で、ひとみちゃんは、私はそういうことありませんと言い切ってます。

 木之内みどりがロサンゼルスまで追いかけていったベース奏者の後藤次利は「アイドル殺し」のあだ名をもつミュージシャンでした。『まちぶせ』のレコーディングメンバーのひとりです。


 石川ひとみちゃんは臆病でガードの固い人でしたから、気心しれない男に惚れることはないですけれど。
 熱しにくい女の子だから。
 前に述べたように、「ジュテーム」写真のように恋人目線で勝負歌を歌うなんて、できないんだよねー...


【復刻版:コメント】 昭和の男 (2009-01-14)

 はじめまして、小林さん。
 「20歳の私」サイトからこちらへ寄らしてもらいました。

 いや?、こんなにディープな石川ひとみさんのファンがいらっしゃるとは...。私はそのまるで正反対の、去年あたりからファンになった見習いです(笑)。

 ひとみさんがデビューした頃は私は大学生でした。「くるみ割り人形」を歌っていたことや、顔が倉田まり子に似ていたこともよく知っておりましたが、ただ、それ以上の印象が希薄なのです。
 その後の「まちぶせ」の大ヒットも良く知っておりますが、やはりこの時も特にファンになるということはありませんでした。

 ところが去年、ネットで偶然彼女の歌を聴き、今まで知らなかった彼女の一面を発見してからファンになりました。

 それから大急ぎでレコードやCDを聴いているのですが、一番強く感じたことは、なぜこんなにずば抜けた歌唱力と美貌をもってしても所謂「ベストテン歌手」になれなかったのかということです。
 当時私は岩崎宏美さんのファンでありましたが(^^)、宏美さんといい勝負どころか、声量・音域の広さなどは完全にひとみさんの方が勝ってますね。

 美しさでも当時の人気者、松田聖子あたりは完全に凌駕していますよ。(私の偏見でしょうか?笑)

 「人気」とはいったい何なのか、本当に摩訶不思議なものですね。
 どれだけ歌の実力があってもどれだけ美人でもダメ、ということなのでしょう。

 小泉今日子や、南野陽子、田原俊彦のような「歌えない歌手」がベストテンの常連になるという不条理さには、他人ごとではありますが憤りを感じますね。

 やはりどうなのでしょう、一言で簡単に言ってしまえば、クセがなさすぎたということでしょうか。
 それとここのブログにも書かれていますが、やはり優等生は一般受けは良くないかもしれませんね。

 それは真面目であった倉田まり子にも言えるかもしれません。
 彼女もアイドルではありましたが、とうとうベストテンには入ることができませんでした。

 あくの強かった不良イメージの中森明菜などとは対照的ですよね。
 やはり人気歌手は一癖もふた癖もある連中ばかりです。
 もっともそんな実力のない連中が跋扈する世界が長く続くわけもなく、アイドルは絶滅してしまいましたが...。

 まとまりませんが、こんなところで失礼します。ブログ頑張ってください。

【返信】(2009-01-14)

 「 昭和の男さん、コメントありがとうございます。
 私の場合、やはりご本人を目の当たりに見たインプレッションが、そうとう印象深かったのでしょう。

 YouTube でも、「まちぶせ」から入った方は、「アモーレ」とか、あまりご覧にならないようです。

 やはり、時間の推移がなくて一斉に出てきますと、いっしょに成長するものがないために、ちょっと待ってという感じになるのでしょう。

 岩崎宏美さんのファンというのは私と同じですね。
 彼女の場合は、ファンのイメージを破られるということはなかったです。加齢以外は...。
 私はサトウハチローの「母の歌」を宏美さんが歌っているアレが好きです。」

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