冬のかもめ 憂い顔の石川ひとみとアイドル・ドレス

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石川ひとみ 「冬のかもめ」 (1982)

作詞:康珍化、作曲:西島三重子、編曲:鷲巣詩郎

 これまで、哀しい歌も笑顔で歌いきってしまう「石川ひとみ的位相転位」について触れてきましたが、この『冬のかもめ』は、はじける笑顔を抑えて初めて本格的な憂い顔を見せてくれています。

 ちょっと、山口百恵のような、表情を抑えたひとみちゃんの憂い顔、新しい魅力です。哀しみを内に秘めて抑えているような感じが良いのかもしれません。


 演技ができないという石川ひとみさんの性格もあるのでしょうか。これ以上の哀しい顔はムリ、という感じです。 

 でも、歌い終わった後の笑顔は、掟(おきて)破りの愛らしさ。(意味不明ですが...)


  石川ひとみ 『冬のかもめ』 (1982年9月21日) 



 「もんもんドラエティー」でひとみちゃんのおじいちゃん役をやっていた坂上二郎が見守っていますね。


 西島三重子さんの哀愁路線、いい曲です。

 少しインパクトが足りないかな、という気はしますが、できの良い大人の女の歌に仕上がっています。


 歌詞を解釈すると、この曲のサビの部分は

   「冬のかもめ、冬のかもめよ 伝えてよ あの人に

    いつか涙が乾いても 忘れはしないと...」

 ...という部分ですが、

 冬のかもめというものが喚起するイメージや情感は鮮明ではありません。


 かもめという鳥の名前は誰でも知っていますが、実際に見て生態を知っている人は少ないのではないかな?

 海の近くの、漁師町にでも住んだ人でないと、生活的な現実味はない。私などは、冬の海は磯釣りに行きますので、かもめという鳥は釣った魚をさらっていくどん欲な鳥という実感があります。

 逆に港で非日常的にしかお目にかかれない海の鳥だから、象徴的に用いることができると考えたのかもしれません。それが普通かもしれませんが、それだとおとぎ話っぽくなって、インパクトが薄れる。


 昨日、『くるみ割り人形』の愁い声に比較するものとして、伊藤咲子『乙女のワルツ』をこれまた30年ぶりに聴いてみたのですが、ついつい引き込まれてしまいました。

 なぜかというと、いきなり「つらいだけの初恋、乙女のワルツ」と、この曲の「つかみ」が来るわけです。

「つらいだけの初恋」...このワンフレーズだけで、一瞬にして聴く者のこころを捉えてしまう阿久悠のスゴ技があります。


 個性の違いがありますので、無い物ねだりはできませんが、そのような「つかみ」の要素が「かもめ」では、若干弱いかな。ニューミュージック系の歌の特徴なのかもしれません。

 演歌であれば石川さゆり『津軽海峡冬景色』みたいに歌えば、思い入れたっぷりで良くなりますが、サラリ系の石川ひとみちゃんの歌ですから、歌詞で引き込む要素がこの歌では大切ではないか、と思う。


 芸能界の事情には全く疎いので、なぜ石川ひとみの歌に阿久悠の歌詞がないのかなと思います。

  南 沙織 3曲
  桜田淳子 21曲
  森 昌子 12曲
  岩崎宏美 16曲
  ピンクレディー 14曲
  伊藤咲子 6曲
  石野真子 6曲
  柏原芳恵 6曲

 他のアイドルたちはこれだけ多くの曲を提供しているのに、石川ひとみには一曲もない。

 ナベプロの歌手は一人もいないようですので、阿久悠がナベプロを拒否していたのでしょうか。「スター誕生」の審査員でしたから、ライバルの「君こそスターだ!」の方には歌詞を提供しないとか?

 石川ひとみファンとしては、理屈抜きに寂しいです。サッコもマコもヨシエも6曲ずつもらっているのに...ひっちゃん0曲。

 阿久悠は歌手のマネージャーのような視点をもって、その時その時の歌手にふさわしいものを考えて曲作りをした人のようですから、ナベプロのようにプロデューサーやマネージャーを輪番制にして、コロコロと歌手をいじるやり方には合わなかったともいえますね。


 この『冬のかもめ』、確かに良い曲なのですが、いまいち強く引きつけられるものが弱い、のめり込めるほどのものが若干不足、という感じはありますが、しみじみきける良い曲であることは間違いない。

 売り上げ半減するほどの原因は曲には見あたらず、前作の『君は輝いて天使に見えた』が元気いっぱいのノリノリ曲だったことから、まったく対照的なこの山口百恵路線にファンが付いてこなかったと見るべきかと思う。

 その結果として『君は輝いて天使に見えた』の半分の売り上げにとどまりました。

 もちろん、売り上げだけが歌の良さの尺度ではないのですが、ファンの心をどう掴むかというプロデュースの観点から、ずっと見てきていますのでその点をご了解頂ければと思います。

 それにしても、ひとみちゃんのドレスのふくらみ、すごいですね。この時期がマックスになるのかな。年齢的に、アイドル路線は最終章に近づいているはずですが。

 当時は、このようなドレスが流行っていたのかと思います。

 同じ時期に、私の姉の年若い後輩の女性が、これくらいふくらんだ淡いピンクのドレス姿で我が家を訪れたことがあり、「うわー、もろにアイドルしている!」と驚いて、どうしてふくらむのか中を見せて頂いたことを思い出します。

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