作詞:岡田冨美子/作曲:西島三重子/編曲:松任谷正隆
『冬のかもめ』のような哀しい歌作りが持ち味の西島さんが、淡い恋の歌を作曲しました。
岡田さんは前回『秋が燃える』を作詞した方ですね。本来は小洒落た作風の方です。
『にわか雨』は石川ひとみちゃん自身、好きな曲の一つではないかな。
高校生か大学1.2年生くらいの年齢の淡い恋心の歌ですね。
『にわか雨』(1983年6月21日) 梅雨時のリリースです
薄いブルーのドレスで、柔らかな歌い方をしていて、アイドルっぽい歌になっています。
歌詞の意味からすると、『まちぶせ』の裏返し版ですね。
好きなあの人の目にとまりたい、という思いの中での、にわか雨が演出してくれた偶然の相合い傘、いいですね。
今、車のラジオを聴いていたら、「土砂降り」というテーマで、リスナーの方が相合い傘のようなご縁で結婚して、還暦を迎えたというお話がありました。
今どきの、女の子・男の子からすれば、「かったるい」ということになるかもしてませんが、年齢設定を中学生くらいに考えれば、共感できるのではないかな。
私のドメイン分類からいくと、
イノセントラブ → → → → → → まみれ系
伊藤咲子『乙女のワルツ』 <『にわか雨』 <『まちぶせ』
という順列に位置づけられますね。
そして、時系列で見ると、伊藤咲子は17歳、石川ひとみ「にわか雨」は23歳、「まちぶせ」21歳です。
プロデュース戦略から見た場合、大人の女の歌である(はずの)『パープルミステリー』の後に、この曲というのは無理目ではないでしょうか。
この曲をリリースするベストタイミングは、ズバリ『まちぶせ』前です。
にわか雨のいたずらで、偶然片思いの彼と相合い傘になれたうれしさ。
好きだとか告白しなくとも、このままお付き合いが始まりそう!
その後、ちょっと進展しない期間があって、ある日!
「夕暮れの街角、覗いた喫茶店、あの娘が急になぜか綺麗になったのは、 あなたとこんなふうに会ってたからなのねェ。好きだったのよ あなた...」
このようにプロデュース出来たなら、ストーリーとしては完璧です。
「あなた」という言葉が、過不足なくしっくりと片思いの恋心にマッチして、違和感がなくなります。
『まちぶせ』はもっと意味を持ち、もっと大ヒットしたでしょう。
私の別ブログで、この『まちぶせ』の歌詞について、簡単に取り上げたことがあるのですが、ニューミュージック系の歌というのは、リアリティー重視なのですね。
それまでの歌詞というのは、詩の流れで来ていましたから、メタファー(暗喩隠喩)を重視する傾向が強い。
象徴的な表現で、事象を再構築するのが作詞家の腕の見せ所です。
ニューミュージック系はそういう言葉の使い方には気を使わず、実感を直接的に表現する、という意味では、『まちぶせ』の歌詞は「詩的表現としては凡庸」だ、と書いたわけです。
しかし、状況設定が良くて、物語性を強く持っているから良い曲になっているわけです。
メタファーは何もない。指示表出性の言葉で、リアリティーが勝った歌です。
言語能力が低く、言葉に対する感受性が次第に鈍くなっている漫画育ちの今時っ子が増えている社会状況では、ニューミュージックの出現は歴史的必然だったのでしょう。行間が読めない者でも、直接的で実感のある表現ならば、理解しやすい。
この歌詞の中で、唯一特徴的なのは「付き合ってもいない男」に対して、心の中で「あなた」という女性的、距離感のない感情だ、と指摘したわけです。
けれども、短い歌の中では「あなた」という以外に、適切な呼び方がないという表現上の問題もあるわけです。実際の現場であれば、「好きだったのよ ひろクン」とか、そういった言い方になるでしょうが、語呂が悪いですから、「あなた」で収めるしかない。
同じような例として、『きみは輝いて天使に見えた』
「走ると揺れて、止まると揺れて、緑色の列車は行くよ」...赤でも水色でも銀色でも語呂が悪いから、緑なのだと。常磐線か?などと詮索しても、意味はない。
ところで、付き合ってもいない男に「あなた」ということが、図らずも女性的感情の特質をあらわしているな、ということで、片思いの情念を鮮やかに描いているという結果になっているのでしょう。
けれども、私のストーリー組み立てでは、『まちぶせ』の前に、『にわか雨』を持ってくることで、「あなた」という表現が『にわか雨』の世界を受けて、何の 違和感もなく、「なぜ、まちぶせのような、美しき青春の過ち」に走るのか?ということが、劇的に見えてくるわけです。ストーリーになる。
ですから、なぜこのタイミングでという思いは残ります。曲そのものは、ずっと以前にできていたようですが。
ですから、この曲は『冬のかもめ』のB面にでも入るはずだったのではないかな、と想像するわけです。
B面に入れるには曲が良くて、もったいない、とみんなが考えたからではないか...
飛躍しすぎていますか?
それで、B面に入れるのをやめて、別な曲を押し込んだ。
それが、
『いつわり』(作詞:石川ひとみ、作曲:山田直毅、編曲:松任谷正隆)
だった。
そうか、『冬のかもめ』を歌い終わった後の、ひっちゃんの「掟(おきて)破りの可愛さ」は、この人に恋しちゃったせいなのか...と、勝手に想像してしまいます。
(この人との結婚の記者会見で、「こんなに幸せで良いのかって...。実物の方がいい男です」ってさ。
しかし、ひとみちゃんの公式なお話では、闘病生活の中で、いつも態度が変わらない彼に信頼感を寄せるようになった、ということです。
ということは、病気になったとたんに、態度が変わったり、次第に離れていった人が多かった、ということでもあるわけです)
自分の詩に曲をつけてもらうということは、二人が精神的にまみえる営為ですから。職業作詞家の歌詞に曲をつけるコラボレーション以上のものがあるはずだ...
...という勝手な想像で、ストップしています。
なぜ、この『にわか雨』がこの時期にリリースされたのか?と思います。
次にくる曲が『恋』であることを考えると、出すタイミングを失った曲だと。
ナベプロの制作部が当初予定していたのは、「にわか雨」は『まちぶせ』の次にリリースするということだったそうです。(『ぼくらのCD-BOX(1) 』に記載されています。)「石川ひとみファン」のCD-BOX(1)記事をご参照下さい。
ところが、『まちぶせ』が大ヒットしたために、次の曲「にわか雨」をストップして、賞取りのために秋まで『まちぶせ』を歌い続け、夏の歌であるこの曲を出すタイミングを失った。
翌年夏は、「三枚の写真」、「君は輝いて天使に見えた」の天野滋路線が確定してしまい、もう一年延期された。季節の歌ですので、夏を外すと一年先延ばしということが2回続いて、リリースのタイミングを外したようです。
しかし、歌詞の内容から言って、78年か79年に出せればなと思います。
ストーリー的に見れば、『まちぶせ』の後では、うまくつながりません。どうしても、「あなた」という言葉に引っかかるのと、『まちぶせ』のあの情念はどこから来て、どこに行ってしまったの?ということですけど。
偶然の相合い傘で、淡い片思いが片思いではなく、相手も私を意識しているみたい!...、これが恋の始まりなのかも?と感じ、次第に思いを募らせていく私。
『まちぶせ』のあの情念は、ここから来ている、と。
だから「すきだったのよ あなた!」と声を張り上げてしまう。
これが、後に来たなら「あなたを熱く見る」私はどこにいってしまったの?
ただただ照れている二人、ですからねぇ...。
【復刻版:コメント】 愚零闘武多 (2008-12-29)
「 初めてコメントさせて頂きます。遅くなりましたが当方もこちらのブログをリンクさせて頂きました。
有名な話ですが【にわか雨】は当初【まちぶせ】の次にリリースする予定だったんですよ。 ところが【まちぶせ】のヒットを目の当たりにしてナベプロが「次も三木聖子のカバーで行け!」と。 当時の担当ディレクターがおっしゃってるのだから間違いないと思います。 でも何故2年間お蔵入りのあと復活したんですかねぇ?」
【返 信】(2008-12-29) 「愚零闘武多さん、貴重なコメントありがとうございます。
ムタさん、昨日だかのリングで、ボノちゃんの頭、なでていたのでは?
って、あれはほんものか ε- (^、^; ふぅ
コアなファンの方の情報収集は本当にすごいと、感心しています。
私は「アイドルは遠くにありて、想うもの」という感じで、ひとみさんの肝炎の記事なども、新聞の週刊誌広告で知っただけで、雑誌を立ち読みすることもなかったくらいの遠距離恋愛想像派ですので。
今後も、お気づきの点をご指摘頂ければありがたいです。」
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